『玉講座その七・ひねり続編』
広瀬 雄二
今年は、一昨年述べた「ひねり」の問題について、新たな考察を試 みます。
ひねりを覚えて、ある程度マスターした人に付いて回る悩みに、 「こね」ることがあります。「こね」とは、手玉にひねりを加える ときに、キューをひねり方向に必要以上にスイングしてしまい、手 玉が予期せぬ方向に行ってしまうことをいいます。詳しくは 一九九四年度版 の私の文を読んで下さい。
「順ひねりが難しい」。ひねりを多用するようになってしばらく経っ たのち、ある時期突然この悩みが訪れます。私もその悩みにぶつか りました。一九九四年のビュッヒェルヒェンで述べたことを実践す るようになって以来、逆ひねりは苦手な球ではなくなりました。と ころが、知らないうちに順ひねりが入らなくなっていました。もち ろんこねて薄く外してしまうのです。こねないように、キューをコー ンとまっすぐ撞き出すイメージを描いたりはしているのですが、ど うしてもイメージからはずれて「クイ」っとこねてしまうことのほ うが多いのです。
もう、丸一年くらいそんな症状に悩まされたある日、
「ほんとにちゃんとした厚みに狙ってるんだろうか」
と、初歩的な疑問が生じて来ました。こねないことを前提にした的
玉の厚みを計って狙いをつけ、その場にキューを置いて半歩下がっ
て上から眺めました。なんとびっくり、キュー先がかなり薄い方向
を向いていたのです。これでは入るわけがない、と思いました。
何故このような厚みを狙うようになってしまったのでしょう。
前々回、こねることでキューを逃 す撞き方を「柔らかい撞き出し」、こねずにまっすぐ振り抜く撞き 方を「硬い突き出し」と表現しました。初心者のうちは、「硬い撞 き出し」一辺倒のプレーをしていますから、手玉をひねるときはキュー ずれが生じ、右にひねるときは手玉が左に、左にひねるときは手玉 が右にずれて飛んで行きます。そうした理由から、最初のうちは、 順にひねるときはちょっと薄めに狙っておくのが普通です。ところ が、これに慣れて来ると、ちょっと薄めにずらしたその厚みこそが、 ちゃんと入る厚みだと認識するようになって来ます。
さて、ある程度熟練して来ると柔らかい撞き出しが着実に身に付い て来ます。すると当然捻るときにキューの向いている方向と、手玉 の進む方向が一致するようになって来るのですが、狙う厚みの感覚 は今までのままですから、当然薄く外しがちになって来ます。そし て、薄く外したときに「こねったー!」と言って、まっすぐ撞き出 すことができなかった事を反省します。
ここで、一般的にいわれている「こねるのは良くない」にあえて反 論します。
「積極的にこねよう」
もちろんあなたがこねに悩まされていない場合は敢えてこねる必要 はありませんが、悩まされている場合はそれを無理矢理抑えつけず にこねて撞いたほうが良いと提言します。なぜなら、そういう人達 にとって「こね」撞きは極めて自然な撞き方だからです。試しに、 思いっきり手玉の端を撞いてこねない撞き方と、こねる撞き方のどっ ちがやさしいか比べてみると良いでしょう。こねちゃったほうが楽 なんです。こねるのは、手玉がキューの最初の構えと同じ方向に進 ませるために無意識のうちにやっていることであり、決してそれは 手玉の方向を狂わせているわけではないのです。また、やってみれ ばわかりますが、こね過ぎたからといって、手玉の走る方向がはげ しく変るわけではありません。もちろんキューを立ててしまったり してひねりが異様に加わって手玉がカーブして進んでしまうことは ありますが、でだしの角度はほとんどずれません。
では、敢えてこねて狙う撞き方をお教えします。普通、順捻りでポ ケットインを狙うときは、キュー先を捻りの位置で構え、まず中心 撞きの厚み付近で狙い、それを少し厚めにずらして狙うなどと言う ことをしていると思います。それを
「こね」に悩む人は一度試してみると良いでしょう。